3.サーバのスペックをチェックする
この項の流れ
- 海外レンタルサーバのサイトでの、機能一覧表の見方を説明します
- 機能一覧表で、必ずチェックすべき重要項目について説明します
- 海外レンタルサーバのサイトでの、ヘルプページの見方を説明します
評判、価格、サーバ容量などの表面的な情報で大雑把にあたりをつけたら、細かなスペック(サーバ自体の物理的なスペックではなく、サーバとしてなにができるか)を見て候補のサーバを比較していこう。
上の画像は海外ホスティングサービスの典型的なトップページだなということで取り上げてみたBluehostのトップページのキャプチャである。ここからどうやってスペックを見られるページにアクセスできるか簡単に説明していきたいと思う。
すぐ目に入るのは、眼鏡を掛けた女性の画像がある帯の左側に表示されている、容量とか転送量とか無制限でメールアドレスも作り放題だよといった情報。そしてついクリックしたくなる場所にある「Sign Up Now」。ここで注目してほしいのは眼鏡のお姉さんの一つ上にあるメニューバーの「Features(特徴の意)」というリンクだ。海外サーバはこの単語がスペック表へのリンク名として使われるケースが非常に多い。
基本、トップページにFeaturesとあったらそこから見られるはずだが、共有サーバのプランだけでも複数あり、他にVPSや専用サーバもやっている、ドメインも販売しているというところではやや探し方が複雑になる。
上はHawk Hostのトップページにあるメニューバーだが、まずはここから共有サーバのページへのリンクを見つけなければならない。キーワードは「Hosting」という単語で、共有サーバは「Hosting」のほか、「Shared Hosting」「Web Hosting」と書かれるケースがほとんどだ。Hostingという言葉さえ見つければ詳細なスペック表に辿り着けるだろう。
注意したいのは再販プラン、つまり借りたサーバを人に又貸ししてお金を得られるプランがあるところ。海外サーバには、このプランが存在しているところが多い。Hawk Hostにも存在しており、Reseller Hostingと表記されている。
HostingはHostingでも共有プランとはまったく別物で個人で使うようにはできていないので個人でレンタルサーバ業を始める気がないのならReseller Hostingという文字列は無視しよう。
Reseller Hostingって具体的にどんなの?
契約者が与えられた領域の再販を行えるプラン。Web Host Manager(WHM)などの管理プログラムを使い、領域に自分のユーザを割り振って、使用出来るディスクサイズや月間の転送量の上限などを個別に決められる。わかりやすく言うなら、契約者がレンタルサーバの運営者になれるプランということになるだろう。
Shared Hostingの領域を友人などに貸すのは、マンションの一室を借りて、その中の部屋を又貸しするというような感じだが、Reseller Hostingの再販は、階全体を借りて、一室ごと又貸し出来るという感じだと思う。
Bluehostの方に戻るが、featuresをクリックすると、
と、縦長のスペック表が表示される。このデザインも海外ホスティングサービスの典型例である。
向こうの会社はスペックの見せ方というのがほぼ決まっていて、少年漫画雑誌に広告を出して酔拳のマニュアル本などを販売していた日武会(みやすのんきの『やるっきゃ騎士』や弓月光の『ボクの婚約者』などを読んで興奮していた男子相手に、酔拳のマニュアル本のほか、飲むとすぐ腹筋が割れますみたいなプロテイン、手首や足首に巻く重りなどを販売していた)の特典並みに、とにかく表記できそうなものはなんでもという感じでズラズラと並べる。たとえば、
FTP Access
あるいは、
24x7 FTP Access
とあったら、FTPクライアントソフト(FFFTPなど)でサーバにいつでも接続できますよ、ということになる。24x7というのはSupportという言葉にもよく付く。ようするに24時間x7日間で年中無休という意味だ。では逆に、FTPでつながらない有料共有サーバ、週一回休みが入るFTPサーバというものが存在するのだろうか?
これは、もしキャバクラにスペック表というものがあったら、
女の子とのお喋り
と書かれているようなもので、「それって当たり前なんじゃないの?」と一言いいたくなる。
できることがたくさんあるからすごいんだろうと単純に考える人はないと思うが、向こうはそう思わせようとしているので、自分がサーバでなにをやりたいのか、基準をはっきり持って表を見るようにしよう。
サーバを借りる上で本当に重要な項目はどれか。もしかしたら初めて借りるサーバとして海外サーバを候補にしたいという人もいるかもしれないので、ざっと並べてみよう。
サーバの容量はどれぐらいか?(項目表記の例:Disk Space、Disk Storage)
月額5ドルのサーバであれば無制限(Unlimite)の場合が多いが、1ドル程度のもっとも安いプランでは1GB程度であることが多い。また、無制限とあってもハードディスクを使っている限り物理的に容量の限界は存在するわけで、サイト運営とまったく関係のないファイル(たとえば、VHSビデオをエンコードした、朝岡実嶺のお宝AV動画ファイルなど)をバックアップのために上げるなどということを繰り返していると警告を食らう可能性が高い。
許容転送量はどれぐらいか?(項目表記の例:Bandwidth、Site Transfer)
国内のサーバだと月あたりか日あたりで表記がまちまちだが、海外だとほほ月あたり。制限が掛かっている場合、それを超えると基本的にサイトが見られなくなる。ただ、超えると従量制になって超過料を請求してくる可能性もある(1GBを超えるごとに*ドルといった感じ)ので、相当な転送量が見こまれる場合は無制限のところに絞ったほうがよい。
独自ドメインをいくつ使えるのか?(項目表記の例:Add-On Domains、Domain Hosting)
Aというサイトにはexample.com、Bというサイトにはexample.jpという風にサイト別にドメインを使い分けている、または使い分けたいという人は必ず確認しよう。チェックマークやunlimitedとあればおそらく無制限だが、低価格のプランだと一つしか使えないなど制限しているところも多い。
サブドメインをいくつ使えるのか?(項目表記の例:Subdomains)
低価格プランで使える独自ドメインの数を1に絞っている場合でも、サブドメインはそれなりの数、使える場合が多い。
無料でドメインが付いてくるか?(項目表記の例:Free Domain)
海外サーバはサーバ使用時にドメインを一つ付けてくれるところが結構多い(ホスティングサービス会社が持っているドメインではなく独自ドメイン)。簡単にいうなら、利用料金が月額5ドルとするとドメインの利用料もそこに含めますよ、なので見た目にはドメイン無料ということになります、まったく新規にサイトを開設する場合は別の会社でドメインを取る手間が省けていいでしょといった感じ。
MySQL、PostgreSQLのデータベースをいくつ作れるか?(項目表記の例:MySQL Databases)
ホスティングサービス会社とプランによって1からunlimitedまでかなり数が分かれる項目。スクリプトごとにデータベースを使える方が個人的には管理がしやすいと思っている。PostgreSQLは使えないサーバの方が多分多い。
SSHでの接続は可能か?(項目表記の例:SSH、Secure Shell、Shell Access)
距離の関係か、FTPでの接続は結構不安定でアップロードしたファイルの中身が壊れたり、空になったりすることが結構ある。SSHはファイルが暗号化されるのでデータベースのパスワードなど重要なものが書かれているファイルを転送するときに安全だというのもあるが、FTPと比べてアップロードが安定しているような気がする(実際どうなのか。識者の皆さんの意見求む)。
ファイルの送受信のみで使う場合は特になにも必要ないが、コマンド操作を行いたい場合は免許証やクレジットカードのコピーなど、個人を証明できるものの提示を求められる可能性大。
Cronは使えるか?(項目表記の例:Cron)
スクリプトを定期的に実行する場合などに使用。たとえばアクセスログを取って、30分に1回、アクセスログ解析スクリプトを実行させて「当サイトでよく読まれている記事」を出力するなど。大抵、1分を最低単位として使えると思うが1時間に1回など制限をしてくるところもある。
独自IPは持てるか?(項目表記の例:Dedicated IP)
独自SSLを使いたい場合は必須の条件。月額3ドル程度の有料オプションになっている場合が多く、月額の利用料金が書かれているか、あるいはあえて項目から外されている可能性もある。独自SSLで使う場合のほか、ドメインごとに独自IPを割り振って相互リンクさせ、検索エンジンでの評価を上げるということに使われるんじゃないかなあと思う。
独自SSLは可能か?(項目表記の例:Private SSL)
独自IPが使えれば普通、独自SSLが使えるはず。サーバ自身がSSLサーバ証明書販売の代理店となって独自IPとセットで有料オプションにしている場合もある。
差が出てくるのはだいたいこの辺で、あとはなにがどれだけ書かれていようとも各社ほぼ横並びといっていいだろう。
更に細かい情報を得たいときはKnowledgebaseを見よう
以上の項目を抑えておけば、あとは国内サーバではできることができないという部分はないとほぼ言い切れるのではないかと思う。
とはいえ、海外サーバという情報の少ないなんだかよくわからないものと契約するとなったら、もっと深く、PHPが使えることはわかったけど、じゃあPHPのバージョンはいくつなのか、セーフモードか否か、PHP.iniはいじれるのか、MySQLのバージョンはどうなっているのか、.htaccessは使えるだろうけどそれでサーバのタイムゾーンの変更はできるのか等々、更に深く機能を知りたいところ。上記のような簡易スペック表ではとても物足りないだろう。
そういった場合に見るべきところがKnowledgebaseだ。日本流にいうなら、よくある質問と回答といったところだろうか。だいたい、トップページのあまり目立たないところにある「Help」「Support」といったリンクからアクセスできるようになっている。
上のキャプチャはHawk HostのKnowledgebaseだが、海外ホスティングサービスのサイトというのは「ホスティングサービス会社開設キット」のようなものでもあるのか、どの会社でも契約の部分とヘルプページのフォーマットがほぼ同じ。なので、Hawk Hostをまったく知らない海外サーバユーザでも「あ、このページ見たことある」と思う人は相当いると思う。私は最初、安価なサーバはどこへ行ってもこれが出てくるので海外には日本のGMOを遙かに上回るスケールでホスティングサービス会社の総元締めがいるのかと思ったぐらいだ。
とにかく、それぐらいKnowledgebaseの仕組みは向こうで一般化しているので、最初は戸惑うだろうが、サーバを比較しているうちに「またこれか」となって違和感なく使えるようになるだろう。
Knowledgebaseを見ることは、細かいスペックを調べられることともう一つ、役に立つことがある。それはホスティングサービス会社の質がある程度わかるということだ。若い会社の中にはKnowledgebaseに書き込まれている情報がたったの一つというところもある。書く時間がないというのであれば、人員が少ない→トラブル時に迅速に復旧できるのか? となるし、書くことがないというのであれば、それはあまりにもユーザを無視しているといわざるを得ないだろう。Knowledgebaseの情報が多いということは、それだけユーザの方を向いている、ユーザの方を向ける人員を確保しているということなのだ。
このページのまとめ
- サーバのスペックは料金プランによっても結構違うよ
- あれができるこれもできるとたくさん書かれていても重要なことはその中のいくつもないから、数に惑わされないでね
- 表に出てない情報はKnowledgebaseに書かれていることが多いよ
- Knowledgebaseの情報が薄いところはよほど新しいところか、サポートには期待できないところかも