7.トラブル時の対処方法

この項の流れ

  • 海外のホスティングサービス会社とのコミュニケーション方法を説明します
  • 海外サーバのサポートでよく使われている、チケットシステムについて説明します
  • インターネットの翻訳サービスについて説明します

 海外サーバは、一度動き出せば、あとは国内サーバと同じように使える。しかし、サーバにはアクセス負荷によるダウンや、ディスクのクラッシュなどのトラブルがつきものである。その場合、国内サーバであれば、ユーザ同士の情報交換やホスティングサービスの告知などによって状況がわかるが、海外サーバを使っていると、情報が届きにくく、たとえば、サイトにつながらなくなったことの原因が、ダウンなのかクラッシュなのかメンテナンスなのか、それとも、自身の設定ミスなのかさっぱりわからないということがよくある。
 状況を知るため、また、解決方法を知るためにはサポート担当者に英語で問い合わせをするしかない。つまり、英語でコミュニケーションを取る必要があるわけだ。私は、海外サーバを使うにあたって、問い合わせというのがもっともハードルが高いことだと思う。

 海外サーバのサポート担当者に問い合わせを行う場合、連絡手段は三つある。

  1. メール
  2. サポートフォーラム
  3. ライブチャット

 だ。
 サポートフォーラムについては国内のものと使い方は変わらないので、ここでは、残りの二つの手段、それぞれでのコミュニケーションの取り方と注意点を説明していきたいと思う。

ライブチャットでサポートを受ける

 日本ではロリポップぐらいしか浮かんでこないが、海外サーバではチャットによるサポートがよく行われている。

 上の画像で赤く囲っているものは、Hawk Hostのサポートページにある、ライブチャットへ誘導するためのアイコンである。ここをクリックすると画面が切り替わり、チャットプログラムが起動して、サポートの人が「質問はなんですか?」みたいなことを英語で聞いてくる。
 オペレーターが対応してくれる時間帯は「オンライン」、オペレーターがいない時間帯には「オフライン」と表示されることが多く、オフライン時にはこちらのメールアドレスなど入力して、質問メッセージを送り、後ほど連絡してもらうという形になる。
 Just Hostの例のアレとは違い、もしチャットプラグラムが起動してメッセージが送信されてきたとしたら、向こうで文字を打ち込んでいるのは正真正銘の人間なので、どうせプログラムの自動返答だろと思って、適当に書いて送信しない方がいいだろう。

 ライブチャットでサポートの人が答えてくれることは、かなり簡単なことに限られる。Knowledgebaseに書かれているようなこと、あるいはYESかNOで即答出来るようなことなら大丈夫だと思うが、詳しく調べないと答えがわからない質問、自分の立場では答えられないような質問だと「改めてメールで質問してほしい。チケットを発行した上できちんとした回答を送るから」みたいなことを言ってくるだろう。
 ようするに、ライブチャットとは、ちょっとした質問をしたい人向けのサポートシステム、言うなれば入り口付近にある案内所のような役割を担っていると言える。

ライブチャットで答えてくれそうな質問

  • PostgreSQLは使えるか?
  • アダルトサイトの運営は可能か?
  • 月の転送量の上限は?

ここじゃ答えられないので、改めてメールで質問してくれと言われそうな質問

  • MySQLにある日本語の文字データがLatin1の扱いになっていて、dumpすると文字化けするのだが、正常なデータをダウンロードするためにはどうしたらいいのか?(→技術的な質問)
  • 私は日本人でアダルトサイトを運営したいのだが、貴社のサーバで運営した場合、法律的にはアメリカの法律と日本の法律、どちらに従えばいいのか(→法律に関する質問)
  • 今月、転送量の上限を確実に超えるイベントがあるのだが、一日だけの話なので、プランのアップグレードで対処したくない。こちらが指定する一日だけ、転送量のリミットを解除してほしいのだが出来るか?(→サポートの人の権限で明確な返答が出来ない質問)

チケットシステムの使い方

 ライブチャットで「チケットを切って質問に答える」と言われた場合、改めてメールで質問をし直す必要がある。
 海外サーバのサポート業務における「チケットシステム」というのは、ようするにどういうものかというと、だいたい以下のような感じになるだろうか。

サポートにおけるチケットシステムとは?

  1. ユーザが質問を送る
  2. サポートが受信して、その質問に「123」などの番号をつける←チケット発行
  3. サポートがユーザに、「あなたの質問を受け取りました。123番として管理します」というメールを送る
  4. 以降、ユーザの質問は「質問ナンバー123番」といったツリーで管理される
  5. ツリーの状況(123番回答済み、123番未回答)はおそらくサポートなら誰にでも見ることができて、未回答の質問に答えていくので、放置の質問がなくなる

 ようするに、海外サーバのサポートが言う「チケットを切りたい」というのは、「曖昧にしたくない、きっちり(デジタル)文書化しよう」という意味である。
 国内サーバのサポートでも同様のシステムで質問を管理していると思われるが、経験的に、チケットという言葉を使うのは海外の方が多い。よって、国内サーバを使った経験のある人だと、チケットというのは耳慣れない言葉なので構えてしまうかもしれないが、ユーザが負担を強いられるようなシステムではないので安心してほしい。

 サーバのユーザアカウントを持っている場合、サーバが使っているプログラムが対応していれば、ユーザ専用エリアにログインし、そこから質問を行う、つまりチケットを発行してもらうことで自分でもツリーを確認することが出来る。この場合、自分とサポートの人だけが見られる掲示板に質問を投稿するという感じになる。以下、例として、Hawk Hostのサポートエリアにログインし、質問をして回答を受け取るまでの流れを書いていくことにしよう。

 ログインしたあと、まず「Submit a Ticket(チケットを提出する=問い合わせを行う)」の部分をクリックする。

 すると、どういった用件なのかと聞かれるので、選択する。上の画像で言うと、「サイトが表示出来なくなったが、どうすればいいのか」といった技術的な問い合わせであれば「Support」、支払いプランを変更したいといった金銭面での問い合わせであれば「Billing」を選択するということになる。

 投稿フォームが出てくるので、最初に1で自分が考える問い合わせの重要度を選択する。ほとんどはMediumでいいと思うが、サーバにデフォルトでインストールされているプログラムに脆弱性があるよといった内容であれば、重要度を上に設定した方がいいだろう。2には質問のタイトル、3には内容を書く。

 投稿を行うと、上の画像にあるような掲示板に書き込まれ、サポートとのやりとりが始まる。再度、書き込みを行う場合は、

  1. サポートエリアにログイン
  2. View a Ticketで自分が提出した問い合わせのタイトル一覧を見て、追加の書き込みを行いたいものを選択
  3. スレッドが表示されるので、追加の書き込みを行う

 という流れになる。サポートが投稿すると、ユーザアカウントを作ったときに登録したメールアドレス宛に通知されるので見逃す心配はない。また、質問が解決した場合でもログは残され、「View a Ticket」からいつでも確認出来る。

要望をうまく伝えるための英訳のコツ

 海外サーバを使うにあたって、必ずしも英語の読み書きが出来ないといけないということはない。たとえば、私は英語はほとんどわからない。多分、中学二年生レベルぐらいの知識しかない。
 以前、当時付き合っていた彼女と駅のホームで電車を待っていたら、外国人が彼女に近づいてきて英語で話し掛けてきた。彼女は英語が話せる人だったのでしばらく二人で談笑していた。私は二人がなにを話しているのかさっぱりわからなかったので、横でずっと愛想笑いをしていた。話が終わって外国人が立ち去ったあと、彼女に「なんの話をしていたの?」と聞いたら、「『よかったらうちに遊びに来ないか?』と言われたから断っていた」というのである。つまり、彼女が隣でナンパされていたのに、それがまったく理解出来なかったのだ。その程度の英語力の人間である。しかし、一応、数年間にわたって海外サーバを使っている。問い合わせも何度か行ったし、すべて適切な回答を得ることが出来た。

 なぜ、彼女がナンパされていたことすらわからなかった英語力でも、海外サーバのサポートとやりとり出来るのかと言えば、インターネットの翻訳サービスを活用しているからである。
 使っているのは、「エキサイト翻訳」と「Google翻訳」の二つだ。

サイト紹介:エキサイト翻訳

エキサイト翻訳

 エキサイトが運営している翻訳サービス。かなり昔からやっているイメージがある。いわゆるきっちりとした文章の翻訳は、Google翻訳よりもいい気がするので、海外サーバのサポート担当者との交渉のような、形に残るような文章はこちらで訳すことが多い。

サイト紹介:Google翻訳

Google翻訳

 Googleが運営している翻訳サービス。エキサイト翻訳より後発だったと思う。エキサイト翻訳と比べると、ルーズな言葉、スラングなどの翻訳が得意という印象があるので、海外サーバ関連のフォーラムに書き込まれた文章はこちらで訳すことが多い。

 私は問い合わせを行う(日本語を英語に訳したい)時はエキサイト翻訳、返答が届いた場合(英語を日本語に訳したい)時はグーグル翻訳と使い分けることが多い。ただ、基本的には「日本語→英語」でも「英語→日本語」でも、一つのサービスだけを使えばいいと思う。

 ここで、翻訳サービスを利用する時のコツを紹介しよう。アメリカ人が送ってきた問い合わせに対する返信を訳す場合は、英文をコピー&ペーストして、翻訳ボタンをクリックすれば、エキサイトでもGoogleでもだいたい意味の通る日本語にしてくれるのだが、問い合わせの文章を作るために、あまりいろいろなことを意識せず下書きした日本語をフォームに入力して翻訳すると、アメリカ人にとって意味不明な英文が出来上がる可能性が高い。
 意味不明な英文を送らないために、以下のことに注意して下書きの日本語文章を書くとよい。

1.必ず主語をつける

は○○してほしいと思っている」とか「あなたは○○してくれますか?」とか、どんな文章でも必ず主語をつけるようにしよう。主語のない日本語を翻訳すると、意味不明な文章になりやすい。

2.文章を短くする

「さっき自分のサイトに接続したら表示されなくて、ちょっと困っているんですけど、こっちで確認すべきことがあったら教えてもらえますか?」と、日本人に話し掛けるような文章を作って訳すと、ほぼ間違いなく意味不明な英文になる。

「私のサイトが表示されません」
「私はとても困っています」
「今、私が出来ることはありますか。教えてください」

 こんな感じに分解して、言葉の関連がはっきりとわかるようにして訳すと、意味が通る英文になる。

3.一つの意味しかない言葉を選ぶ

「サーバがおかしい」と書くと、翻訳サービスのプログラムは「おかしい」を「面白い」と訳す可能性がある(「おかしい」が実際、どう訳されるのか確認していないが、意味が違ってくる言葉は存在している)。前の文章や、かかる言葉でいろいろな意味になる言葉ではなく、一つの意味しかない言葉を使うようにしよう。たとえば、「サーバがおかしい」よりは「サーバに不具合が発生している」といった文章で訳した方がよい。

4.日本語から英語に訳した文章を、更に日本語に訳して確認する

 出力された英文を更に日本語に訳して、最初に入力した日本語の文章と比較してみよう。つまり、「これはペンです」(英語に訳す)「This is a Pen.」(日本語に訳す)「これはペンです(になる?)」という確認作業を行うということだ。伝えたい内容が維持されている場合は大丈夫だと思うが、なんだかよくわからない日本語になってしまっている場合は、日本語を英語にした段階で、翻訳サービスがうまく解釈出来ていない可能性がある。その場合は、上記1、2、3を確認して、最初の日本語文を書き直して、再度試してみよう。

このページのまとめ

  • 海外サーバでサポートを受けるとしたら、ライブチャット、サポートフォーラム、メールの三つぐらいの手段があるよ
  • ライブチャットは、簡単なことを聞くだけならいいと思う
  • メールを送ると、自動的にチケットが発行されることが多いよ
  • チケット化されると、サポートでしっかり管理されるんだよ
  • サーバのユーザアカウントを持っていると、自分が送った過去の問い合わせも見られる場合もあるよ
  • 問い合わせは英語で行う必要があるけど、翻訳サービスを使えば英文が書けなくても大丈夫!
  • 日本語を英語に翻訳する時は、元になる日本語の文章の書き方を工夫してね
  • 具体的に書くと、「主語をつける」「文章を短くする」「意味が一つしかない言葉を使う」だよ!

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